海女さんカリフォルニアに行く(3)

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〜5〜 モントレー シンポジウム編

さて、ホームステイ先での朝食では、お父さんが
コーヒーを入れたり、パンを焼いたり大忙しです。

「おぉぉ、ここのお父さんはよく働くねぇ〜!
 あんた、いい男をつかまえたよ。
 おらほうでは、男は、いったん座ったら動かないよ」

「アメリカでは、逆なんですよ」ホストマザーが笑って答えます。

「だー、そんならアメリカに住みたいねぇ。
 畑の草取りで、誰か雇ってくれないかねぇ。
 その前に、いい旦那を探さなくっちゃねぇ、はっはっは」

「募集してみたら?きっと列が出来ますよ。はっはっは」

ジャニスは私達に配慮して、朝食に日本茶やみそ汁まで出してくれました。

「2日間も飲んでないから嬉しいねぇ」
ジャニス特製、マシュルーム入りみそ汁を一口飲んだ海女さん、

「おぉぉ、こらうんめぇーーーー!!!」

一気に飲んだあと

「おかわりぃーー!!」

これにはジャニスも嬉しそう。
“They love my miso soup!”とご機嫌です。

「おぉ、こらうんめぇ。
 わりいねぇ、おんだらのためによ、
 味噌やネギまで買ってこさえてくれてよ!」

「ノープロブレム!この辺は日系人が多いから、
 ネギはスーパーで売っているのよ」

「わりいねぇ、わざわざよ!」

海女さんたちは、ホストファミリーの気遣いに
感激もひとしおのようです。

さて今日はいよいよシンポジウム。
会場となるマリタイム・ミュージアムでは
朝からアワビに関するたくさんの発表が行われています。
加えて館内では万祝の展示、外ではアワビダービー等も行われ
会場はもうアワビ一色に。
海女さん達は伝統の白装束で、そのシンポジウムのとりを務めます。

サンディさんの質問に、海女さんが答えるスタイルで
会談は進んでいきます。

「潜った時、もし取れすぎたら、どうするのですか?」
「網に入らないとさぁ、服の中に無理矢理アワビをつめるんだけど、
それがどんどんおっぱいの方まで上がってきちゃってさぁ〜、はっはっは」
会場大爆笑。

通訳のM橋さん,本当にご苦労様でした。

ともあれ「海女の会談」は大成功!
会場を何度も爆笑の渦に巻き込む話術、
さすがです。

会談の最後には、10年間大切に保管してあった
ベサニーが日本に残した食器類を返還し、
「ベサニー、10年大切にとっておいたんだよ」と
会場をホロリとさせた海女さんたち。

しかし、会談が終わった次の瞬間、

「恵子ちゃん〜、おんだらー、はぁここでいいや」

!?

なんとステージの下(つまり客席の一番前)で
衣装を脱ぎ、着替え始めたのだー!

・・・おいおいおいおい!

しかし、海女さん達は平然とハダカに。

なぜか行き交う人々も、二人が着替えている前を普通に通っていく。

なぜかしら〜!?

着替え終わった海女さんたちは、夕食会に参加した後
ゴールデン・ステート・シアターへ向かいます。

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ステイ先のジャニスさん(中央)といっしょに
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シンポジウムの舞台上で
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会場を笑いの渦に巻き込む

海女さんカリフォルニアに行く(2)

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〜3〜 モントレー デモンストレーションダイビング編

今日は、朝からデモンストレーションダイビング。
日本の海女さんが100年前のアワビ漁を再現するとあって、
海辺には報道陣を含め、100人近い人々が集まってきています。

いよいよ海女さんたちが登場、みんな固唾をのんで見守っています。
そんな中、いよいよ海に入っていき、開口一番

「うおぉぉぉぉ、はっけぇーーーー!!!」

そこでカメラを構えているアメリカ人達に「何を言っているのか?」と
一斉に尋ねられ

「冷たいと言っています」

「おお、やはり、カリフォルニアの海流は寒流ですから、
 緯度は同じでも、日本とは水温が異なるのですね」
みんな一様に納得したような顔。

そういうことでいいのか???

保護区になっていて漁が禁止されているため、
海女さんたちは、あらかじめ用意したフェイクのアワビを捕り
その様子を資料映像としてカメラに収めます。
無事アワビをゲットすると、岸から大きな拍手が。

あがると必ず火を焚くので、そこまで再現したかったのですが
たき火も禁止ということで、キャンピングカーを用意。
そこで温かいシャワーを浴びることに。
「お〜広い、ここで暮らしたいねぇ」と海女さん大喜び。

写真はこのデモンストレーションダイビングの様子を報じる地元紙です。
他にも数紙が取り上げており、海女さんは一躍有名人に!

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〜4〜 モントレー アフターダイビング編

無事デモンストレーション・ダイビングを終えた海女さん達。
キャンピングカーで着替え終わって出てくると
すっかりピクニックランチの支度が出来ていました。

「まぁったくこんなに大騒ぎしてアメリカまで来て、
 何にも捕れないんじゃ申し訳ないねぇ」

ポイントロボスの海には、ラッコが食べてしまったのか、
アワビはまったくいなかったのです。
今回のダイビングは資料映像を残すことが目的だし、
そもそも保護区になっているところなので
アワビを捕れなくても全く問題がないわけですが、
ひとたび海に入れば、獲物を必ず持ち帰りたい海女さん達。

「まったくホントに申し訳ないねぇ。
 こうなったら、ここで裸になって
 白浜音頭でもおどろうかねぇ」

いいから〜!!そんなことしなくて!
とにかく裸にはならなくていいから〜!!
どうしてそういう発想になるのー???

さて、ランチを終えるとカーメルでショッピングです。
カーメルは風光明媚な土地で、クルセイダーズのピアニスト
ジョー・サンプルも、この地を謳った
「カーメル」という美しい楽曲を残しています。

フィラデルフィア出身、大学で海女の研究をしている人類学者の
ベサニーさんも一緒に買い物することに。

「おぉベサニー、久しぶりだぁね〜!」

「オー、カワサ〜キー!!
 下のサン〜ター!!」

!?

90年代半ば、白浜に住み、研究を続けていた学者の彼女。
海女さんたちを呼ぶときは、なぜか屋号〜!?

かくしてカリフォルニアの空の下、カーメルの高級ショッピング街で
白浜町川下の屋号が飛び交うことに!!

「シンミチサン、ゲンキ?」
「あそぅのばぁさんは入院したっけよ」
「オーノー!ダイジョブデスカー?」
「はぁいいっぺよ、いっときおいねぇったけんが、退院したぁから。」
「だぁけんがやせたぁな」

といった会話が、素敵な高級カフェで延々続きます。

その日の夕食はレストランでツアーの皆さんといただきました。
その後、ホームステイ先に帰ると、そこにはたくさんの人が・・・

「オー!アマ・ダイバー!!」

最盛期のアワビ漁を100年ぶりに再現した海女さんたちを
一目見ようと、たくさんの人々が集まってきていたのです。

中にはサインをもらおうする人も。

「恵子ちゃん、おらぁよこたに書う文字はおいねぇよ。
 代わりに書いてくらっしぇぇよ」
「そんなことやったら意味ないよー。漢字でいいからさー」

サインをしたり写真を撮ったり、質問を受けたり、大忙しです。
しかしちっとも疲れた様子を見せない海女さんたちに脱帽!
次の日はいよいよ、シンポジウムです。

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ベサニーと再会。
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報道陣やギャラリーが集まる。
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いよいよ潜る。

(30) You look familiar. Haven’t we met before?

「見覚えがあります。どこかでお会いしていませんか?」

“familiar”という形容詞、共通するイメージは「家族のように親しんでいる、記憶に残っている」です。A familiar voice called my name. 「聞き覚えのある声が私の名を呼んだ。」になると、だれの声だかわかっているときにも言う事ができますし、He is familiar with this area.「彼はこのあたりをよく知っている/熟知している」という意味でも使われます。冒頭の文は、実は、見覚えがないときにも使えることがありますが…。

海女さんカリフォルニアに行く(1)

2006年モントレーツアーで、海女さんに同行した山口恵子さんの寄稿です。抱腹絶倒の珍道中、お楽しみください!数回にわけて掲載して行きます。

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海女さんカリフォルニアに行く

これは、2006年にカリフォルニアで開催された
コンバージェンス2006に参加し、デモンストレーションダイビングを行うために
太平洋を渡った白浜の海女さんたちの
房州弁の通訳として付き添った山口恵子が
2人の5日間の素顔を綴ったドキュメンタリーです。

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〜1〜   南房総編

2006年2月14日、白浜の姉妹海女、吉田恵美子さんと、宮本玲子さんのところに
一人の来客が、2人の通訳を伴って訪れました。
アメリカのカブリオ大学教授で、歴史学者のサンディ・ライドン氏でした。

彼には夢がありました。
1年前に海女小屋で出会った南房総の海女さんたち。
モントレーで4月に行われる国際シンポジウム「アワビコネクション」のときに
100年前のカリフォルニアで行われていた伝統的な素潜り漁を
日本人の現役の海女で再現しようというのです。

白浜の宮本さん宅のお茶の間で
お茶を飲んで,しばらくしたあと、彼が口を開きました。

「お二人を、ぜひ、アメリカにご招待したい。
今年行われる、アワビの国際シンポジウムにゲストとして出席し、
モントレーの海で潜ってほしいのです」

「!?」

「だー恵子ちゃん、アメリカだーなんておっそろしい、おらぁおいねぇよ」
「あんが、おっだらでお役に立てるんだら、お世話になって連れていってもらう
べぇかよ」
「おらぁ飛行機あんかておいねぇよ」
「おっだらでいいんかよ」

「もちろん!!」

「でー、行こうかよ」
「ほんとかよ」

というわけで、2人の白浜の海女さんは、なんと太平洋を渡って
カリフォルニアの海で潜ることになってしまいました。

働き者の海女さんたちは、ほとんど白浜を出たことがなく
宮本さんは海外旅行も初めてです。
一体どうなるのでしょうか?

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〜2〜  サンフランシスコ編

当日・・・。

「恵子ちゃん、お世話になるよー」
「あんただけが頼りだよ、よろしく頼むよ」

とかなんとか言いながら、バスでも飛行機でも、まったくのマイペース。

アメリカ人のスチュワーデスさんにも房州弁で押し通す海女さんたち。
「荷物がずねぇ(大きい)からよ、こうさ入れてくらっしぇよ」
“OK”
「おー、サンキューサンキュー、おらぁ英語はこれしかわかんねぇよ、はっはっ
は」
飛行機の中で響き渡る房州弁に、私は他人のフリ・・・。

さて初日は、サンフランシスコの観光です。
まずはフィッシャーマンズ・ワーフにてランチを取ることになりました。
サワードーという、ちょっと酸っぱい大きなパンに入った
クラムチャウダーが有名です。
バスがフィッシャーマンズワーフに近づき
有名な、大きなカニの看板が見えてくると・・・

「恵子ちゃん〜、こらーおら方でいう、がにんまだぁなー」

・・・がにんま!?そんな言葉、久々に聞いたよ〜!
ちなみに「いそっぴ」よりももっと大きいカニを、白浜の方ではがにんまといい
ます。

その後、「フィッシャーマンズワーフのブッシュマン」に出会いました。
この人は、自分で藪のように木を手に持って隠れており
観光客がやって来ると、わっと脅かす名物男です。
ブッシュマンが海女さんを「わっ」とおどかすと

「うおぉぉ、たまげたぁーー!!!」

そこらじゅうに響き渡る声のでかさに、さらにみんなびっくり。

その日はゴールデンゲート・ブリッジなど有名どころをおさえて
それぞれのホームステイ先へ。
私も海女さんたちと同じ家にステイします。
海女さんたちとホームステイ先との間での話を通訳するためです。
私達は、ジャニスの家にお世話になることになり、
家まで送ってもらうため、ジャニスの車に乗り込みました。

しかし海女さんたちは、すでに車の中から
通訳してもしかたがないような(?)ことを連発。

「だ〜、畑がよ!ただごとひれぇなぁ」
「あそ〜らは、道がずっくんでらぁでよ」

そのたびに「彼女たちは何といってるのか?」と聞かれ
説明すると
「アーティーチョークという野菜を作っているのよ。
 ここは全米の何十パーセントものアーティーチョークを作っているの」
「最近の異常気象で3月はずっと雨だったの。
 道が悪いのはそのためよ」
などと丁寧な応答が返ってきて、こちらが恐縮。

さて、次の日海女さんたちはいよいよカリフォルニアの海で潜ります。
どうなることやら・・・

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↑サンフランシスコの「がにんま」
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↑サワードウのクラムチャウダーをいただく

(29) An expert at anything was once a beginner.

「どんな達人だって、かつては初心者だった」

新しい生活がスタートする4月。新しい生活をはじめた方、そして気持ちも新たに何かに取りかかる方も多いと思います。何事も、はじめるのに遅すぎるということはなく、継続は力であり、成功に近道はありません。そして、そうです、どんな達人だって、最初は初心者だったのです。あなたが初心者なら、達人になるチャンスはあるということです。Keep up your good work!